August 2010
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Loving, Kissing, Smiling, And Living e.p.
1 職場の同僚と忘年会の二次会にむかっている最中、道路をはさんだむこう側に陽介がひとりでとことこと歩いているのを見つけた私は、隣で携帯の画面を見ていた田中さんに「ごめん。やっぱり二次会はやめとく」と小さな声で言った。 「えー、チカさんどうして?」 田中さんは顔をあげると携帯をぱたんと閉じて、私は携帯を閉じたときに見えた田中さんの派手なマニキュアの色に目を奪われいて、田中さんは不満そうな声をあげたあと、にやにやと笑いながら「これから彼氏に会いにいくんでしょう?」と言った。 ...
「ここにいてほしいとおっしゃるなら、よろこんでいましょう。時間ならあるのです。今日、審理があると思ってきたのですから。さきほど申したことは、わたしの裁判に対してわ...
– フランツ・カフカ, (2009), 審判, 池内紀, 白水社, 67-68
December 2009
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夢の中で「私」はモンタージュ以前の世界に投げ出されている。夢の中で大の大人が何歳になっても真剣になるのは、モンタージュが完成されていない、断片化された世界の中で...
– 保坂和志, (2001), 世界を肯定する哲学, 筑摩書房. 166-167.
四十三歳、戦争が終わってからもう人生の半分が経過してしまった。でも記憶はありありと、まるで現在のことのようによみがえる。そして時には記憶が物語へと導かれていく。...
– ティム・オブライエン. (1998). 本当の戦争の話をしよう. 村上春樹. 文藝春秋. 68
November 2009
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視覚的な構造を耳が聞き取ることができるとはかぎらない。時間の流れの中で展開されるという意味で、小説は音楽に似ている。いったん演奏がはじまってしまったら流れにそっ...
– 保坂和志.(2005).小説の自由.新潮社.88(傍点部→太字)
(…)意図的に物語を構成する諸要素をずらして繋いだり、予測される展開を外したり、遅延させたりして物語を無効にしようという試みは幾らでもあったし、これからもあるでし...
– 佐藤亜紀.(2006).小説のストラテジー.青土社.56-57
(…)逃げるということは――ただ学校から逃げることばかりを意味したのではない。なによりもまず、自分自身から逃げることを意味したのだ。アア、自分自身から逃げること、...
– ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ.(2004).フェルディドゥルケ.平凡社.89.(傍点部→太字)
(…)おれの体には統一がない。部分的にはそこここがどうもまだ子供のものだ。おれの頭はおれのふくらはぎを嘲弄揶揄し、ふくらはぎはふくらはぎで頭を笑う。指は心臓を、心...
– ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ.(2004).フェルディドゥルケ.平凡社.10-11
フィアルタの春は曇っていて、うっとうしい。故に、すべてが灰色に煙っています。最初の段落の風景をよく覚えておいて下さい。特に、遠くに見える「青白いかすかな光に照ら...
– 佐藤亜紀.(2006).小説のストラテジー.青土社.48-52
さきほど書いたように、文字で書かれる文章というのは順次的・直列的であって、物理的な外見からいったら、『暗夜行路』と『子どもたち』には――ダ・ヴィンチの「最後の晩...
– 保坂和志.(2005).小説の自由.新潮社.60
一つの小説を読むときに、その小説の固有の面白さやいわくいいがたさ(説明のつかない面白さ)を発見できないかぎり、その小説は型や時代・社会の傾向の産物にしかならない。...
– 保坂和志.(2005).小説の自由.新潮社.50
僕がイサキさんの家で毎日のように観た、パゾリーニという男の映像作品、そして彼の実際の生涯というものの奇矯な相関には、なんだか次元を捩れさすような愛憎の屈折、より...
– 諏訪哲史.(2009).ロンバルディア遠景.講談社.244 - 246
人に何か伝えようとするなら、わかりやすく箇条書きしてチラシにでも書いて配れば充分でしょう(それさえも文学であり得るとは思いますが)。わざわざ詩にしたり、小説に組み...
– 佐藤亜紀.(2006).小説のストラテジー.青土社.17-18
ここで意図されているのは、伝達ではなく、伝達の断絶です。意味ではなく、無意味です。人間的な言語の使用域を越えた何かを伝達するために、無意味を突き付けざるを得ない、...
– 佐藤亜紀.(2006).小説のストラテジー.青土社.16